フローからリフローへの移行課題と対策

フローをリフローに置き換えるという発想

従来、挿入部品のはんだ付けはフローソルダリングに頼るのが常識でした。
しかし近年、工程短縮・歩留まり改善・環境負荷低減といった要請の中で、「フローのリフロー化」という考え方が注目されています。
つまり、ディスクリート部品やスルーホール部品をもリフロー炉で一括処理する試みです。

温度プロファイルの再設計が鍵

課題は単純ではありません。リード部品や大型トランスは熱容量が大きく、上部ヒーターのみに頼ると過熱やフラックス劣化を引き起こします。
一方で加熱不足でははんだが十分に溶融せず、接合不良を招きます。そのため、従来の「部品リードΔTのみで判断する標準プロファイル」では対応しきれず、再設計が不可欠です。

下部ヒーターの積極活用

近年の実験では、下部ヒーターを主体に設定し、上部ヒーターは必要最小限に抑えることで、部品表面の過熱を避けつつスルーホール内部まで熱を通す方法が効果的であることがわかってきました。
さらに、断熱治具や放熱治具を併用することで、部品ごとの熱環境をきめ細かく調整できます。

コンベア速度とファン制御の妙

たとえば、同じ温度設定でもコンベア速度を0.3m/minから0.35m/minへ変えるだけで、部品表面温度が20℃以上変化するケースもあります。
さらに、ファンの回転数ひとつで温度分布が大きく動くことも少なくありません。
すなわち、「温度設定」よりも「搬送条件」の最適化が、リフロー化成功の鍵を握っているのです。

はんだ供給方法と課題

フローを用いない場合、はんだ供給にはディスペンサやメタルマスク印刷を応用する方法があります。
しかし、スルーホール全体に供給すると加熱時にフラックスが暴発し、はんだボールやブローホールを誘発するリスクがあります。
印刷量・印刷形状・印刷位置の調整は、従来以上に緻密な設計が必要となります。

フラックス劣化という壁

特にリフロー炉ではプリヒートの熱風影響が大きく、フラックス活性が早期に失われてしまうことがあります。
これにより濡れ性が低下し、ホール内の充填不足やボイドが増える要因になります。
熱風を抑えた加熱方式や、遠赤外線を併用する方式を取り入れることで、この問題は大きく改善可能です。

まとめ

「フローのリフロー化」は、決して容易ではありません。
しかし、下部ヒーター主体の熱設計、搬送条件の最適化、フラックス特性の吟味といった工夫によって、確実に道筋が見え始めています。
もしこのアプローチが標準化されれば、工程は劇的にシンプルになり、環境負荷・人件費・設備投資のすべてにメリットが広がるでしょう。
課題は多くても、フローのリフロー化は未来の量産実装を変える可能性を秘めています。

error: Content is protected !!