フラックスの“見えない劣化”と現場での対策

フラックス劣化の怖さ

はんだ付けの成否を左右するのは、実は「はんだ」そのものよりフラックスの働きです。酸化膜を除去し、濡れ性を確保するという本来の役割が失われれば、不良は一気に増加します。厄介なのは、フラックスの劣化は外観からは判別できないという点です。

劣化のメカニズム

  • 揮発:プリヒートやリフロー中に活性成分が蒸発し、実装面に十分届かない。
  • 酸化:フラックス自体が酸化し、逆に金属表面を酸化させる要因になる。
  • 残渣の変質:一見きれいに見える残渣でも、絶縁性が低下してイオンマイグレーションや腐食を誘発。

プリヒートゾーンでの熱風の影響

特に注意すべきはプリヒート工程での熱風加熱です。プリヒートは「ゆっくり均一に温める」ことが理想ですが、強い熱風が局所的に当たると、フラックスの表面が急激に乾燥・劣化してしまいます。活性時間が短縮され、リフロー本番で酸化膜除去が十分に機能しないのです。
さらに熱風主体の加熱では、フラックスが飛散・暴発するリスクも高く、これがはんだボールやブローホールにつながるケースも少なくありません。対策としては、熱風の流速を落とす、もしくは遠赤外線加熱との併用で緩やかに昇温させることが有効です。

現場でできる対策

  1. 保管条件の徹底:低温・低湿度で保管し、開封後は早めに使い切る。
  2. プリヒート条件の最適化:温度だけでなく昇温速度(℃/秒)を管理し、フラックスが暴発しない範囲で安定化させる。
  3. 加熱方式の見直し:熱風一辺倒から、遠赤外線や下部ヒーターを組み合わせることで“やさしい加熱”を実現。
  4. 残渣の電気特性評価:外観ではなく、絶縁抵抗・耐湿性などの試験データを活用する。

まとめ

フラックス劣化は「見えない敵」です。特にプリヒート工程での熱風の影響は、現場で見落とされがちな落とし穴。加熱方式を工夫し、保管・プロセス管理を徹底することで、歩留まり改善への大きな一歩となります。

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