リフロー炉の議論は、しばしば「ゾーン温度はいくつか」という数値中心で語られがちです。しかし、実際に基板実装を左右するのは“温度”ではなく“熱の回り方”です。この視点を欠くと、いくら設定値を調整しても歩留まり改善は頭打ちになります。
加熱方式の違いと役割
熱風加熱
炉内を循環する熱風で基板を加熱します。伝熱効率は高い一方で、局所的に強い対流が当たると部品が動くリスクもあります。
遠赤外線加熱
基板表面や部品に直接吸収されやすい波長を利用します。熱風では届きにくい陰の部分にも熱を届けられる点が強みです。
下部ヒーター
基板裏面からの加熱は、大型GNDや部品下のパッドに熱をしっかり伝えるために不可欠です。上部加熱だけでは補えないバランス調整の要です。
“熱バランス思考”のポイント
- 昇温勾配:表面だけ先に熱が入らず、全体がじわりと温まるように。
- 均熱化:部品の大小・配置差による影響をならす。
- 溶融保持時間:必要十分な時間を確保し、ぬれ性とセルフアライメントを引き出す。
- 冷却速度:急冷しすぎず、結晶構造や部品応力への配慮を忘れない。
まとめ
リフロー炉の議論は「温度プロファイルの曲線」に終始しがちですが、大切なのは“熱をどう届け、どう逃がすか”。この熱バランス思考こそが、安定実装への第一歩です。