リフロー炉の加熱方式と“熱バランス思考” ― 数値よりも熱の伝わり方を設計する

リフロー炉の議論では、しばしば「ゾーン温度はいくつか」「ピーク何度で何秒か」といった数値が中心になります。 しかし、実装品質を左右する本質は“温度”ではなく“熱の回り方”にあります。

熱が均一に伝わらなければ、どんなに理想的な温度プロファイルを設定しても不良は減りません。
本記事では、リフロー炉の加熱方式とその役割を整理し、私が提唱する熱バランス思考の実践ポイントを紹介します。

加熱方式の違いと役割

熱風加熱

循環ファンによって炉内の熱風を流し、基板を加熱する方式です。 伝熱効率が高く、短時間で昇温できる点が特長ですが、風が局所的に当たると部品が動くリスクがあります。 また、風量が強すぎるとフラックスの活性成分が早期に揮発し、濡れ不良やボイド発生の原因にもなります。 上部風量は必要最小限に抑え、下部からの補助加熱で全体の温度を支えるのが理想です。

遠赤外線加熱

波長の長い赤外線を利用し、基板や部品表面に直接吸収させて加熱する方式です。 空気を介さず輻射によって熱を伝えるため、部品の陰になる部分や熱風が届きにくい箇所にも均一に温度が届きます。 特に下部からの遠赤外線加熱は、基板を内側から温める「床暖房効果」を発揮し、上部ヒーターとのバランスを取る重要な役割を担います。

下部ヒーター

下部からの加熱は、基板裏面に広がるGND層や部品下パッドなど、熱が届きにくい領域を補う要です。 上部加熱のみでは表面が先に温まり、裏面が追従できずに温度差が拡大します。 そのため、下部ヒーターを上部よりも高めに設定し、基板全体の温度を均一化することが重要です。 この考え方は、まさに“熱のバランス”を意識したリフロー設計の基本です。

“熱バランス思考”のポイント

数値設定を微調整する前に、まず「どのように熱が流れているか」を把握することが大切です。 以下の4つの視点でプロファイルを見直すことで、安定したリフロー条件を再現できます。

  1. 昇温勾配:表面だけが先に加熱されず、基板全体がじわりと温まるようにする。強すぎる風よりも輻射熱で均一加熱を。
  2. 均熱化:部品の大小や密度による温度差を緩和し、熱容量の違いを吸収する。
  3. 溶融保持時間:必要十分な時間を確保し、フラックス反応とセルフアライメント効果を引き出す。
  4. 冷却速度:急冷は避け、金属組織の安定化と部品応力の緩和を意識する。

これらは単なる設定値の調整ではなく、「熱をどう伝え、どこで逃がすか」を考えるプロセスです。
リフロー炉は温度を与える装置ではなく、熱を制御する装置だと捉えることが、歩留まり改善の第一歩になります。

まとめ

リフロー炉の調整を「温度プロファイルの線形」だけで終わらせてしまうと、本質的な改善は見えてきません。 実装品質を高めるには、上部の風を抑え、下部からの遠赤外線加熱で内部までじっくり温める熱バランス思考が欠かせません。

数値ではなく、熱の流れを設計する――。
その意識を持つだけで、リフロー工程の再現性と信頼性は確実に向上します。