鉛フリーはんだは、環境規制や製品の信頼性向上の観点から、近年の実装現場で広く採用されています。しかし、従来の鉛入りはんだと比べて溶融温度が高く、濡れ性や作業性に影響を与えるため、正しい特性理解と適切な条件設定が不可欠です。本記事では、私が現場経験からまとめた鉛フリーはんだの特徴と作業条件を解説します。
1. 鉛フリーはんだの特徴
従来の共晶はんだ(鉛入り)は溶融温度が183℃であったのに対し、一般的な鉛フリーはんだ(Sn-Ag-Cu系)は約220℃と高くなります。これにより、基板や部品への熱影響が大きくなる一方で、耐熱性や接合強度の向上が期待できます。ただし、濡れ性が低下する傾向があるため、工程条件やフラックス管理がより重要になります。
2. はんだ付けの基本条件
2.1 はんだ付け可能な条件
良好なはんだ付けを行うためには、以下の条件を満たす必要があります。
- はんだが十分に溶けていること
- フラックスが有効に作用していること
- ランドや部品端子表面の酸化膜が除去されていること
2.2 基本的な作業条件
はんだ付け作業の前には、必ずフラックスを適切に供給し、酸化膜を除去してからはんだを溶融させます。作業の種類によってフラックスの供給方法は異なります。
- 手はんだ付け:フラックスをはんだコテ先に供給し、直接ランドや部品に熱と溶融はんだを与える。
- フローソルダリング:フラックス噴霧と同時に基板を溶融はんだ槽に通過させる。
2.3 温度条件
鉛フリーはんだの推奨ピーク温度は230〜240℃です。はんだの溶融後、一定時間(60秒以内)を維持し、その間にフラックスの活性化と酸化防止を確実に行います。温度が不足すると濡れ不良やイモはんだが発生しやすく、逆に加熱しすぎると部品や基板のダメージにつながります。
2.4 物理的作用
はんだ付け中には、重力・表面張力・毛細管現象などの物理作用が接合状態に影響します。これらの作用は作業方法や部品形状によって変化するため、現場では条件設定と動作の安定化が求められます。
3. 現場での注意点
- 鉛フリーはんだは従来品よりも酸化が進みやすいため、フラックスの選定と供給タイミングを適切に管理する。
- 高温作業により基板や部品に熱応力がかかるため、冷却工程を計画的に行う。
- 部品や基板の材質によっては、鉛フリー対応品を選定することが望ましい。
まとめ
鉛フリーはんだは環境性と耐久性に優れていますが、その特性を理解せずに従来条件で作業すると不良発生リスクが高まります。温度管理、フラックス管理、物理作用の理解を組み合わせることで、安定した品質のはんだ付けが可能になります。