メタルマスク設計の重要性と実装品質への影響
プリント基板実装において、メタルマスクははんだ印刷の品質を決定づける要素です。開口率や形状のわずかな違いが、ブリッジやはんだ不足といった不良に直結するため、設計段階から十分な配慮が求められます。特にファインピッチ部品やBGA、QFNなどでは、メタルマスクの設計精度が歩留まりを大きく左右します。
メタルマスク設計の基本要素
① 開口率
一般的には、ランド面積に対して60〜80%程度の開口率が目安とされます。開口率が高すぎると過剰印刷によるブリッジやはんだボールが発生しやすくなり、逆に低すぎると濡れ不足や接合強度の低下を招きます。特にBGAのような微小ランドでは、適切な開口率設定が製品寿命に直結します。
② 開口形状
単純な長方形や円形だけでなく、はんだの流動性を考慮した「ホームベース型」や「ダム型」といった開口形状も採用されます。これによりリフロー時のはんだ移動をコントロールし、ブリッジやボイドの発生を防ぐことが可能です。
③ テーパ角度
レーザー加工されたメタルマスクには、開口部にテーパ角度が存在します。適度な角度があれば、はんだがスムーズに剥離し印刷ムラを防止できますが、角度が不均一だとペーストの残留や印刷量のバラツキにつながります。一般には2〜5°のテーパが望ましいとされます。
ファインピッチ部品における課題
BGAやQFNのように0.4mmピッチ以下の部品では、開口設計の難易度が一気に上がります。開口率を下げてブリッジを防ぐと濡れ不足になり、逆に多めにするとショートの原因となります。さらにランドサイズとマスク開口のバランスがわずかに崩れるだけで、不良率が急増します。
このため、最新の現場では「ステップメタルマスク」や「ナノコーティングマスク」が活用され、印刷安定性を高めています。ナノコートはフラックス成分の付着を防ぎ、繰り返し印刷でも安定した供給が可能となるのが特徴です。
不良を防ぐための設計Tips
- 開口率は部品特性ごとに調整(一律ではなく、BGA・チップ部品・QFNで最適化)
- ランド形状に応じて開口形状を工夫(ホームベース型などでブリッジ抑制)
- テーパ角度の均一化(はんだペーストの安定剥離に直結)
- ファインピッチにはナノコーティングを検討(印刷の安定性と寿命向上)
まとめ
メタルマスクは単なる印刷用の治具ではなく、実装品質を根本から左右する要素です。開口率・形状・テーパ角度の最適化はもちろん、部品特性や装置条件との組み合わせまで考慮することで、不良率を大幅に低減できます。リフロー炉の加熱方式と併せて検討すれば、安定した量産品質に近づくことが可能です。