コンベア速度とプリヒート条件で変わるリフロー品質の最適化ガイド

コンベア速度と熱移動の関係

コンベア速度は、リフロー工程における熱移動量のコントロールレバーです。同じ炉温でも、基板がゾーン内を通過する時間が変われば、受け取る熱量(積分値)は大きく変わります。

  • 速度が遅い → 熱移動時間が長くなり、部品全体にじっくり熱が回る
  • 速度が速い → 表面は加熱されても、内部や大型部品まで熱が届きにくい

特に部品実装密度が高い基板では、部品やパターンが「熱の影」となり、局所的な温度差(ヒートシェード)が発生します。この場合、コンベア速度を少し落とすだけで、温度ムラが大きく改善されるケースがあります。

ポイント: プロファイル設計時には、単にピーク温度だけでなく「液相以上の滞留時間」と「全体の吸熱バランス」を意識することが重要。速度調整は温度設定よりも細かく効くため、最初のチューニング項目として有効です。

プリヒート効果とセルフアライメント

プリヒートゾーンは、部品や基板をゆっくり均一に温める準備区間です。この工程が適切だと、後工程でのセルフアライメント(はんだ表面張力による自動位置補正)が最大限に働きます。

  • プリヒート不足 → 急激な温度上昇でフラックスが暴発的に反応、はんだの濡れ性が不安定
  • プリヒート過多 → フラックスの活性時間が終わり、セルフアライメント力が弱まる

鉛フリーはんだでは、融点が高く表面張力も弱いため、鉛入り時代よりもプリヒート条件の影響が大きくなります。

ポイント: TAL(Time Above Liquidus)とプリヒート時間のバランスを最優先で確認。プリヒートは温度だけでなく「傾斜(℃/秒)」が重要で、1.0~3.0℃/secが目安です。

プリヒートによるはんだ凝集力

プリヒートは、はんだ粒子を適切に軟化させ、ランド中心部への凝集力を高めます。BGA・QFN・CSPなど微細ピッチ部品では、この凝集がはみ出し防止やブリッジ低減に直結します。

  • 適切なプリヒート → はんだがランド形状に沿って丸まり、表面張力が均等に働く
  • 不十分なプリヒート → はんだが流れやすくなり、ブリッジやチップずれの原因に
ポイント: プリヒート段階でランド周囲のフラックス活性が十分かどうかを顕微鏡で確認すると、後工程の不良予測が可能になります。

プリヒート条件の調整方法

プリヒート条件を変える方法は大きく3つあります。

  • ゾーン温度を上げる → 加熱勾配が急になり、フラックス活性が早くピークに達する
  • コンベア速度を下げる → 滞留時間が長くなり、熱が全体に均一化
  • 下部ヒーターを活用 → 基板裏面からの加熱で、熱容量の大きい部品やGNDパターンへの熱伝達を改善
ポイント: 調整は必ず1項目ずつ。同時に複数を変えると因果関係が見えなくなります。「温度」「速度」「ヒーター位置」の3軸で管理表を作ると再現性が向上します。

下部ヒーターの調整効果

下部ヒーターは、単なる補助ではなく熱バランス調整の主役になることがあります。特に以下の効果が顕著です。

  • 大型GNDパターンの温度上昇を補助
  • 上下面の温度差を減らし、部品浮きやボイドを防止
  • 上部ヒーター設定を下げても同等のピーク温度が確保できる(熱ストレス低減)
ポイント: 下部ヒーター温度を上げることで、上部ヒーター依存度が減り、部品表面の過熱を避けられます。ボイド低減にも効果があるため、BGAや大型パッドの実装では積極活用がおすすめです。
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