リフロー炉におけるファンの役割
リフロー炉に搭載されたファンは、単なる冷却用の装置ではありません。ヒーターの熱を基板全体に搬送し、温度プロファイルを安定させるための重要な制御要素です。昇温からピーク、そして冷却に至るまで、ファンの設定ひとつで仕上がりの品質が大きく左右されます。
ファンの基本機能
- 熱搬送の均一化:ヒーターからの熱を効率よく部品やランドに伝え、温度のムラを抑える。
- 内部温度差の緩和:大型部品やGNDパターンを持つ基板でも、内部と外部の温度差を縮める。
- フラックス挙動の制御:風量が強すぎるとフラックスが乾燥・飛散し、濡れ性や光沢を損なう。
リフロー部(ピークゾーン)での注意点
リフロー部では、はんだが溶融保持時間(220℃以上の滞留時間)を確保できるかが最大のポイントです。ファンの回転数が低すぎると昇温不足により未溶融や濡れムラが発生しやすく、高すぎると逆にフラックスが劣化・蒸発してフィレット光沢が低下します。さらに、過度な風量はボイド増加や粒子飛散の原因にもなり、外観検査では良品に見えてもX線で不良が見つかるケースがあります。
特にBGAやQFNのようなパッケージ部品では、ファンの影響が顕著です。上部ヒーターだけで昇温させると外側のボールは良好でも内側は未溶融のまま、という現象が起こり得ます。この場合は下部ヒーターの補助と中速回転のファンを組み合わせることで、安定した溶融保持時間を確保できます。
回転数別の特徴
- 低速回転:温度上昇が不足しやすく、特に多層基板では不完全溶融のリスクが高い。
- 中速回転:最もバランスが良く、濡れ広がり・光沢・フィレット形状の安定性に優れる。
- 高速回転:加熱効率は良いが、フラックスの劣化やボイド増加を引き起こしやすい。
冷却工程でのポイント
冷却もまた、ファンの設定次第で仕上がりが変わります。急冷しすぎると熱応力によりクラックが発生しやすく、逆に冷却が遅すぎるとフィレット光沢が鈍くなり、デンドライトの原因にもなります。一般的には220℃から200℃までを30〜40秒程度で冷却する勾配が望ましく、この範囲を外れると長期信頼性に悪影響を与える可能性があります。
実務でのチューニング手順
- 中速回転を基準に設定する。
- 外観検査(濡れ広がり・光沢)で傾向を確認。
- 問題があれば下部ヒーター出力で補正し、ファンは最小限の調整に留める。
- 外観良好でも内部不良が潜むため、必要に応じてX線や断面観察を行う。
まとめ
ファンはリフロー炉の品質を決定づける隠れた主役です。弱すぎても強すぎても不良の温床となるため、「中速回転+下部ヒーター補正」をベースに、基板や部品条件に応じた微調整を行うことが最適化の近道です。