プリント基板実装の製造現場では、「フロー」と「リフロー」という2つのはんだ付け手法が広く使われています。本記事では、それぞれの特徴や工程、長所・短所を比較しながら、適切な使い分けのヒントを解説します。
リフローとは?
リフローとは、あらかじめ接合部分に配置した固体のはんだを、加熱して溶かし、部品と基板を接合する実装方法です。英語では Reflow Soldering(リフローソルダリング) と呼ばれます。
名前の由来
「Reflow」は直訳すると「再び流れる」。つまり、「固体のはんだが加熱によって再び流動する(溶ける)工程」からこの名前が付いています。
なぜリフローが必要か
- 現代の電子機器は小型化・高密度化が進み、部品も非常に小さい
- 大量生産の現場では、手作業ではなく自動実装ラインが主流
- リフローは高精度で均一な接合ができ、複数の部品を一度に接合可能
- そのため、スマホ・PC・車載機器・半導体製造装置まで幅広く採用されている
リフローが使われる場面の例
- スマートフォン基板:極小チップ部品(0402サイズなど)の実装
- 車載制御ユニット:耐振動性が求められるチップ抵抗やコンデンサ
- 半導体パッケージ:BGA、CSPなどのボール接合
リフローの基本工程
クリームはんだ塗布
メタルマスクを使い、基板上の接合パッドにクリーム状のはんだを印刷します。
部品実装
チップマウンタで部品を基板上に正確に配置。
加熱・接合
基板ごとリフロー炉に通し、設定温度プロファイルで加熱。はんだが溶けて部品が基板に固定されます。
主な加熱方式
熱風方式(コンベクション方式)
熱風を循環させて均一に加熱。現在の量産リフロー炉で最も一般的な方式。
赤外線方式
赤外線ヒーターで部品や基板を直接加熱。局所加熱が可能だが、部品形状によって温度ムラが出やすい。
熱風+遠赤外線併用方式
熱風による均一加熱と、遠赤外線による効率的な浸透加熱を組み合わせた方式。部品・基板表面だけでなく内部まで素早く加熱可能。
VPS方式(蒸気相リフロー)
沸点が一定の蒸気で加熱、温度管理がしやすい。温度制御が容易で熱ダメージを抑制できるが、設備コストが高め。
真空方式
加熱工程の一部または全体を減圧環境で行う。はんだ内部のボイド(気泡)を低減し、接合信頼性を高められる。車載・パワー半導体・高信頼性機器で採用増加中。
ギ酸還元方式
加熱中にギ酸ガスを導入し、酸化膜を還元除去。フラックスレス実装や酸化しやすい材料の接合に有効。高信頼性かつ残渣の少ない接合が可能。
リフローのメリット
- チップ部品実装に最適
- はんだ付け精度が高い(ショートや未はんだが少ない)
- 高密度実装にも対応可能
リフローの特徴
- 部品を基板に仮置き → 炉で一括加熱 → 接合完了
- 精度が高く、小型部品の大量生産に最適
- 装置内の温度制御(温度プロファイル)が品質のカギ
リフローのデメリット
- リード部品の実装不可(挿入部品には不向き)
- メタルマスクが必須(両面実装では2枚必要、部品配置変更時は作り直し)
よくあるはんだ付け不良例
- はんだボール、ブリッジ(ショート)
- チップ部品の立ち上がり
- 電極未濡れ
- 異物付着によるショート
- 放熱基板の未溶融による接合不良
リフローの豆知識
初期の電子実装では手はんだ付けやフローはんだ付けが主流でしたが、部品の小型化・多ピン化によりリフローが急速に普及しました。
今ではSMT(Surface Mount Technology=表面実装技術)の中核工程です。
リフローのまとめ
リフローは現代の電子機器製造において不可欠な実装方法です。特に小型・軽量部品の高精度実装に向いていますが、部品形状や基板設計、装置条件によっては不良が発生する場合があります。適切な温度プロファイルと装置条件の管理が、安定した品質を保つ鍵です。