はんだ印刷の量と精度がリフロー品質を左右する理由

リフロー品質を安定させる最短ルートは、はんだ印刷をコントロールすることです。特に0402以下の微小チップや狭ピッチ部品では、印刷量印刷位置精度がフィレット形状・濡れ広がり・ブリッジの発生を直接左右します。本稿では、現場視点で「量」「精度」「セルフアライメント」の関係を整理し、日々の調整ポイントをまとめます。

1. 印刷量と濡れ性の関係

適正量の目安と考え方

はんだは溶融すると表面張力でランドへ凝集し、濡れ広がりが進みます。印刷量が不足するとパッド先端まで到達せず、フィレットが痩せて接合強度低下や微小クラックの原因に。逆に過多だとリード間のクリアランスに流れ込み、ブリッジはんだボールのリスクが上がります。
量は「多いほど安心」ではなく、パッド容積・マスク開口・ペースト粘度・加熱条件のバランスで決まります。

プリヒートとの相乗効果

プリヒートでペースト中のフラックスが十分に働くと、酸化膜除去と濡れ立ちが安定します。印刷量が適正でもプリヒートが不足すれば濡れ性は下がり、逆に過多だとフラックスが先に劣化して溶融時の流動が鈍ります。印刷量×プリヒートはセットで評価しましょう。

2. 印刷精度とブリッジのメカニズム

XYズレとZ方向(厚み)

実装後の位置補正(セルフアライメント)はXYズレには比較的強い一方、Z方向の厚み不均一は補正が効きにくく、片側に余剰はんだが回ってブリッジやチップ立ちを誘発します。特に狭ピッチでは、印刷の「端部のにじみ」「角の丸まり」「開口のバリ」などわずかな要因が不良率に跳ね返ります。

メタルマスクと位置決め

開口形状(台形/ステップ/リダクション)や銅箔段差の有無で付着量は大きく変化します。基板基準穴・治具・ビジョンの「繰り返し精度」を高め、版離れ速度やスキージ圧・角度を安定化させるのが近道です。

3. セルフアライメントの実力と限界

溶融時の表面張力により、部品はエネルギーが小さい位置へ自然に寄ります(セルフアライメント)。印刷量が十分で左右バランスが取れていれば、マウント微ズレは自動補正されやすくなります。ただし、はんだ量が少ない/厚みが偏る/一方の端子が酸化している場合は力が働かず、ズレたまま固化します。
量の確保」と「左右の均一性」がキーです。

4. 現場で効く調整ポイント

4.1 まずは印刷プロセスを固定化

  • メタルマスク開口比(ランド面積に対する印刷面積)を仕様化し、製番ごとに記録。
  • スキージ圧・速度・版離れ速度を標準値化し、日次点検でドリフトを検知。
  • ペーストの保管温度・撹拌時間・開封後の使用期限をルール化。

4.2 次にリフロー側で微修正

  • プリヒート傾斜(℃/s)を見直し、フラックス活性のピークを溶融直前に合わせる。
  • 下部ヒーターを活用し、熱容量の大きいGNDパターンや大型部品の温度遅れを補正。
  • コンベア速度は“全体の吸熱量のレバー”。温度をいじる前に微調整で均熱化。

5. よくある症状と一次対策

  • 先端まで濡れ広がらない:印刷量不足/プリヒート不足。開口リダクション見直しと傾斜強化。
  • ブリッジが出る:過多印刷/厚み偏り/位置ズレ。開口再設計(ウィンドウペイン等)と版離れ調整。
  • チップ立ち:片側余剰/パッド熱バランス差。下部ヒーターで温度差を縮小。

まとめ

はんだ印刷は「最初に決めて最後まで効く」工程です。量は不足させない、精度は厚みの均一まで見る、そしてリフロー条件は印刷を活かすために整える――この順番を徹底すれば、セルフアライメントは最大化し、ブリッジや濡れ不良は着実に減らせます。まずは印刷条件の標準化と記録、次にプリヒート傾斜と下部ヒーターの使い方を合わせて最適化していきましょう。

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