ボイド発生の原因と実践的対策 ― 温度プロファイル・印刷・設計から考える安定リフロー

リフロー後のはんだ内部に発生する空洞(ボイド)は、フィレット強度や熱抵抗を低下させ、接合信頼性を損なう代表的な不良です。 本記事では、現場で頻発するボイドをプロファイル/印刷・材料/設計の3つの視点で整理し、再現性のある改善手順を紹介します。 図示される事例がなくても理解できるよう、工程上の要点を明確にまとめています。

ボイドのメカニズム

はんだペースト中に含まれる溶剤やフラックスが加熱によって揮発・気化し、そのガスが抜け切らず内部に閉じ込められるとボイドになります。 特にプリヒート工程でフラックスが劣化すると、樹脂が粘化してガスの逃げ道がなくなり、内部に大きな空洞が残ります。 また、上部ヒーターの風量が強すぎると、フラックスが一気に乾燥・酸化し、気泡の発生タイミングがずれてガスが閉じ込められやすくなります。 一見光沢のあるはんだ表面でも、内部に多数のボイドが潜むケースがあるため注意が必要です。

プロファイル起因のケース

リフロープロファイルの設定は、ボイド発生に最も影響します。 以下のような条件では不具合が増加します。

  • プリヒート時間が長すぎる:フラックスの活性成分が失われ、ガス排出が不十分になる。
  • 急激な昇温:気化速度がはんだの濡れ進行に追いつかず、内部にガスが残る。
  • 上部偏重・強風:上面からの熱風が強すぎるとフラックスが飛散・酸化し、内部ボイドが増加。
  • 均熱(イコライジング)不足/過多:均熱が短いとガス抜け不十分、長すぎるとフラックス枯れ。

推奨する考え方として、昇温勾配は1.0〜1.5℃/s程度を基準とし、均熱工程では溶剤を抜く時間を最優先に設定します。
溶融保持時間は40〜60秒を目安に調整し、風量は必要最小限に抑えて下部ヒーターで温度を補うことがポイントです。

印刷・材料起因のケース

印刷条件やペースト特性もボイドの発生に直結します。

  • 印刷過多・分布不良:中央部に厚くはんだが溜まると、ガス抜け経路がなくなる。開口設計では中央を薄く、周辺を厚めに調整。
  • 粘度・溶剤バランス不適合:低沸点溶剤の多いペーストや劣化した材料ではガス発生量が多く、空洞が残りやすい。
  • フラックス劣化:保管温度の逸脱や長期使用で活性が低下し、濡れ性・排気性ともに悪化。

ペーストのロット切り替え時には、必ず試し印刷と重量測定を行い、粘度と吐出安定性を確認することが重要です。

設計・実装条件起因のケース

ボイドは設計段階のランド形状や基板条件にも左右されます。

  • ランド設計:QFNやパワー系部品のセンターパッドはガスがこもりやすい。ガス抜け用のスリットやリリーフを設ける。
  • 基板の吸湿・汚染:含水基板では加熱時に水分が気化してボイド化する。リフロー前にプリベークや洗浄を実施。
  • 窒素雰囲気:酸化を抑えることで濡れ性が安定し、ボイド低減に効果的。

設計面では「ガスの逃げ道を設ける」「熱と揮発経路を両立させる」ことが基本です。

現場で実行できる改善手順

  1. 上部風量を一段下げ、下部ヒーター温度をやや高めに設定して上下の温度差を平準化。
  2. 均熱工程を再設計し、短すぎる場合は延長、長すぎる場合は短縮。
  3. 溶融保持時間を40〜60秒の範囲に調整し、ライン速度で微修正。
  4. 印刷パターンを見直し、中央を薄く外周を厚めに配分。
  5. ペーストの粘度・保管温度・製造ロットを確認。
  6. 可能であれば窒素雰囲気を導入し、フラックス酸化を抑制。

これらのステップを一つずつ検証することで、ボイド発生率を確実に下げることができます。

まとめ

ボイドは外観の光沢だけでは判断できず、内部で進行する複合的な現象です。 そのため、プロファイル(昇温・均熱・溶融保持・上下温度配分・風量)→印刷条件→材料健全性→設計の順に原因を整理することが重要です。

まずは上部風量を下げて下部加熱を強化し、均熱時間を適正化することから始めてください。
熱の流れを整えることが、フラックス反応の安定化とボイド低減の第一歩になります。