特殊部品のリフロー実装と温度プロファイル最適化 ― BGA・LED・ハロゲンフリー対応

電子実装分野では、0402/1005チップやBGA、LED、アルミ基板など、熱的・構造的に特殊な部品が増えています。 これらの部品は、一般的なリフロー条件では熱応答が不均一となり、フラックスの劣化や濡れ不足、ボイド発生といった問題が生じやすくなります。

本記事では、各種特殊部品の実装における課題と対策を整理し、特に遠赤外線加熱弱い熱風を活用した温度制御の工夫を中心に解説します。
現場で再現可能なプロファイル調整やフラックス選定の考え方を示し、品質安定化のためのポイントを紹介します。

問題と理由

特殊部品は、基板や部品ごとに熱容量や熱伝導率が異なり、上部ヒーター中心の加熱では熱の伝わり方が不均一になります。 たとえばBGAやLEDでは、ボールやパッド下に熱が十分に届かず、はんだが部分的に未溶融のまま残ることがあります。

一方で、上部ヒーターの温度を上げすぎると、フラックスが早期に反応・劣化してしまい、濡れ性が失われます。
これにより酸化膜除去が不十分となり、接合信頼性が低下します。

このように、上部加熱のみに頼る構成では「熱量の偏り」と「フラックスの反応時間のズレ」が生じ、プロファイル全体の安定化が難しくなります。

問題発生の原因

主な原因は、上部ヒーターの過加熱と下部温度不足による熱バランスの崩れです。 部品表面だけが急速に加熱されることで、ランドや内部層が十分な熱を持たず、リフロー全体の温度勾配が大きくなります。

特に、0402/1005チップのような微小部品では、はんだ量が少ないためわずかな温度差でも濡れムラが発生します。
またBGAやCSPでは、ボール内部の温度が追いつかず、内部空隙(ボイド)や未濡れを引き起こします。

このような現象は、基板裏面の熱供給が不足していることが根本的な要因であり、加熱方式の見直しが必要です。

問題の解決方法

現場で有効なのは、上部の風量を抑えつつ、下部ヒーターを上部よりも高めに設定し、遠赤外線によって基板全体を内側から温める「床暖房効果」を活かすことです。

下部からの遠赤外線加熱は、輻射熱によって基板のランドやパターンに均一な熱を与え、はんだの融解を穏やかに促進します。
同時に上部から弱い熱風を流すことで、対流を維持しながらもフラックスの過乾燥を防ぐことができます。

この加熱バランスにより、BGAやLEDといった熱容量の大きい部品でも内部温度をしっかり確保でき、はんだの濡れ性を安定化できます。
また、0402チップやハロゲンフリーはんだのような熱応答の遅い条件下でも、下部からの加熱支援によって反応を均一に保てます。

重要なのは、プリヒートを長くしすぎないことです。
長時間のプリヒートはフラックスの活性時間を短縮し、ボイドの発生要因となります。
下部から確実に熱を入れることで、短い時間でも基板全体に十分な熱を伝えられます。

まとめ

BGA、LED、アルミ基板、ハロゲンフリーはんだなど、特殊部品のリフロー実装では、部品や基板の熱特性を理解した温度設計が欠かせません。

上部の強い熱風に頼らず、下部の遠赤外線加熱によって基板内部から温めることで、フラックス反応を安定化し、ボイドや未濡れの発生を抑制できます。

「床暖房効果」を意識した温度プロファイル設計は、さまざまな特殊部品の共通課題を解消する現実的な手法です。
熱をどのように伝えるかを見直すことで、複雑な実装条件下でも安定した品質を維持することが可能になります。