濡れ性改善とブリッジ対策:温度プロファイル最適化による実装現場の課題解決

リフローはんだ付けにおいて頻発する課題のひとつが「濡れ性不良」と「ブリッジ」です。さらに、部品の浮きやずれ、薄い基板や耐熱性の低い部材の実装不良も、現場で大きな問題となっています。これらの不良は多くの場合、温度プロファイルの設計とフラックスの劣化が原因です。本記事では、濡れ性改善からブリッジ対策、さらに耐熱性基板対応まで、現場で役立つ改善ポイントを解説します。

1. 濡れ性改善の重要性

リフローではんだがランドや部品リードに十分広がらない「濡れ性不良」は、接合強度不足につながります。主な原因はプリヒート工程でのフラックス劣化です。過度なプリヒートにより活性成分が失われ、濡れ性が低下します。

  • プリヒート時間を30秒程度短縮し、フラックス劣化を抑制する
  • 上部ヒーター温度を適正化し、不要なフラックス揮発を防ぐ
  • メタルマスクの開口率をランドサイズ100%以上に設定し、十分なはんだ量を確保

これらの改善で、鉛フリーはんだでも必要な濡れ性を確保できます。

2. ブリッジ発生要因とその対策

隣接するリード間がショートする「ブリッジ」は、以下の要因で発生します。

  • フラックス劣化による濡れ上がり不足
  • 過剰なはんだ印刷量
  • リードメッキの酸化・剥離

現場での即効性ある対策はプリヒート条件の見直しです。フラックス劣化を抑制することでブリッジを防止できます。また、ランド上に「一文字印刷」を施す、マスク設計を工夫する、といった手法も有効です。

3. 部品浮き・立ち・ずれの抑制

リフロー中に部品が傾く、片側が浮く「立ち」「ずれ」も品質不良の典型です。原因は濡れ速度の差による吸着不均衡です。改善には:

  • 急激な温度変化を避けた温度プロファイルの見直し
  • プリヒート時間を適正にし、濡れ拡がりを均一化
  • 下部ヒーター温度を20〜30℃高め、基板裏面から均一に加熱

これによりセルフアライメント効果を最大限活かし、部品の浮き・傾きを防止できます。

4. 薄い基板・耐熱性の低い部品への対応

近年、薄型基板やFPCなど耐熱性の低い素材の実装が増えています。これらは過熱により130℃以上で接着剤が劣化し、ランド剥離や強度低下を招きやすいのが特徴です。

対策は以下の通りです。

  • コンベア速度を上げ、短時間で加熱処理を行う
  • トップヒーター温度を必要最小限に抑え、熱ダメージを防止
  • 下部ヒーターを高めに設定し、基板裏面から効率的に加熱

これにより、部品や基板の熱ストレスを最小化しつつ、必要な濡れ性を確保できます。

まとめ

濡れ性不良、ブリッジ、部品浮き・ずれ、耐熱性基板対応に共通して重要なのは、温度プロファイルの最適化とフラックス劣化防止です。事前のプロファイル設計を工夫することで、実装不良率を大幅に下げ、歩留まり改善に直結します。リフロー炉運用においては「フラックス劣化を防ぐ」「基板特性に合ったプロファイルを設計する」ことがカギです。

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